daxanya's vault RSS

ほそぼそ蠢いています
hatena diary

Archive

Jan
20th
Fri
permalink
『フランダースの犬』は、アニメとして日本人によく知られている。しかしヨーロッパではほとんど知られていなかった。もとは1872年発表のイギリスの童話だが、原作者の女性が、ベルギーの風俗を、イギリス人の目で偏見的に描いている。「この地方は荒れ果て、人々は不親切で、しかも愛すべき犬を何代にもわたって、激しい労働に不当にこき使っている」こんなことをずらずらと書いている。ベルギーを始めとするヨーロッパで人気が出るわけがない。その上イギリスでも、「運命に抗わずに教会で死ぬ」という内容がアングロ・サクソン的に受け付けられなかったようで、結局欧米では、誰も見向きもしなくなった。

ところが日本では、1975年に感動的なアニメが作られたため、爆発的な人気を獲得する。80年代からの海外旅行ブームでは、ベルギーのフランドル地方観光が定番コースの一つとなったほどだ。もっとも、ルーベンスの絵を観ることはできても、『フランダースの犬』にまつわるものが、そこには何一つない。地元の人間すら話を知らないのだから当然だ。

1982年、大きな転機がやってくる。ベルギー・アントワープの観光局で働いていたヤン・コルテールという男性が、運命を変えた。日本人観光客から『フランダースの犬』という物語の存在を聞いたことが発端である。生真面目な性格で、面白みのない変わり者と思われていた彼には、浮いた噂もなく、恋人はおらず、友達も少なかった。そんなオタク青年の彼は、地元に関係する噂話を聞き逃さなかった。だが日本人観光客に詳しいことを尋ねても、「アニメをやってたんだけど、もしかしたら原作があったのかもなぁ」というだけで、『フランダースの犬』について、はっきりとしたことが分からない。今と違ってインターネットがない時代、日本語の情報はそう簡単に手に入らない。街の誰に尋ねても、何もわからなかった。

しかし彼はあきらめない。「この地方を舞台にしているのなら、図書館にヒントがあるかもしれない」そう考えた彼は、地元の郷土史などを調べ始める。図書館であらゆる資料をあさり、そしてとうとう、60年の間に二~三度しか借りられていなかった原作を見つけた。だが、読み終えた彼はがっかりした。感動するほどの物語ではなかったからだ。原作者は夫に捨てられた後、犬の保護に尽力していたが、周囲に相手にされなくなり、晩年は30匹の犬に見守られて死んだ。そんな彼女の厭世観が反映された作品でしかなかった。

彼は、日本語を学び、日本人観光客の友だちを作り、帰国した彼らからアニメビデオや童話集を取り寄せた。内容は全く別物だった。彼は、今のジャパニメーションギークの先駆けだったのだろう。情熱は、いよいよ膨らむ。一年半かけて調査を行ない、原作の舞台が近くのホボケン村だと突き止めた。原作に描かれた運河がスケルト川だったことも分かった。ついには風車の跡も発見する。変わり者のコルテールのその姿は、周囲から嘲笑を受けていた。当時の日本なんて、極東の島国で、ドイツに加担して負けた挙句に少々景気を持ち直しただけの国、というイメージだったから、仕方ないだろう。だが、彼の熱意は次第に周囲を突き動かしはじめた。ルーベンス以外にこれといって観光資源のないこの街に、もう一つの観光シンボルが生まれるかも知れない。そういった周囲の思惑も重なり、ついには1985年、ネロとパトラッシュの小さな像が、ホボケン情報センターの前に立てられた。除幕式にはアントワープ州知事、市長、在ベルギー日本大使らも参席、盛大なパーティーが開かれたという。風車は観光客向けに作り直された。ネロとパトラッシュが共に埋められた(ことになっている)街の教会は、観光コースとなった。ルーベンスの作品を観るためにアントワープを訪れていた日本人観光客が、ホボケン村にも立ち寄るようになった。その地域は観光収入でおおいにうるおい、観光局勤めの彼の名声も次第に上がった。フランダースの犬はベルギーで放送され、80%近い視聴率をとった。ヤン・コルテールは『フランダースの犬』研究家として知られるようになる。その地域では日本通として知られ、日本との橋渡し役としても活躍するようになった。研究のために日本へ何十回となく訪れるようになり、大の親日家となった彼は、日本人女性の石井ヨシエと結婚した。彼は妻と共に、今でも地元でつつましやかに幸せに暮らしている。

……はずだった。彼が妻を殺害した容疑で逮捕されるまでは。

コルテールが妻を殺したのは、妻の浮気のせいだった。コルテールとヨシエが結婚して数年は、何事も起きなかった。だが次第に、ヨシエは旦那の拘束が疎ましくなってきた。帰宅する時には職場にまで迎えに来る。もっと自由にさせて欲しい、自由にいろいろな場所に行きたい、というのがヨシエの欲求だったそうだが、コルテールはそれを許さない。その時に彼女の前に現れたのが、口が堅いという噂のピエールだったという。ピエールとヨシエが愛しあうようになるのに、時間はかからなかった。ピエールの口は固かったが、ヨシエの下の口は緩かった。

二人の仲は、コルテールに最悪の形でばれてしまう。二人がバスルームで愛し合っているところを、コルテールが発見した。ヨシエは豹変した。日本女性のお淑やかさはどこへやら、情事を発見したコルテールを怒鳴りつける。「あんたさぁ、男としての魅力がないんだよ!!」彼女の口は、悪かった。職場のベルギー人の同僚達と比較して、いかにコルテールが劣ったオタク野郎なのか、罵倒し続けた。コルテールは逆上し、ヨシエをナイフで22ヶ所切りつけて、殺害した。2008年の事だった。
フランダースの犬にまつわる救われない話 (via shibata616)

途中までいい話なのになぁ。

  1. amabumi reblogged this from asada-santohei
  2. romotary reblogged this from shibata616
  3. junmyk reblogged this from asada-santohei
  4. jaguarmen99 reblogged this from asada-santohei
  5. asada-santohei reblogged this from shibata616
  6. freeeeeakxx reblogged this from fuckitpanda
  7. eripico reblogged this from garance510
  8. garance510 reblogged this from shibata616
  9. nasubanana reblogged this from allgreendays
  10. mug-g reblogged this from shibata616
  11. fujihajime reblogged this from allgreendays
  12. altimeter reblogged this from shibata616
  13. zaq1234 reblogged this from shibata616
  14. onakaippei reblogged this from allgreendays
  15. eirxvi reblogged this from shibata616
  16. daxanya1 reblogged this from shibata616
  17. allgreendays reblogged this from shibata616
  18. pc-386ge5 reblogged this from shibata616
  19. yamaxanado reblogged this from shibata616
  20. mizki9577 reblogged this from shibata616
  21. fumi-tano reblogged this from shibata616
  22. fuckitpanda reblogged this from shibata616
  23. motonezumi reblogged this from shibata616
  24. 3000cm reblogged this from shibata616
  25. shin1-p reblogged this from shibata616
  26. text-man reblogged this from shibata616
  27. shibata616 posted this